曳船58号型「えいせん58ごうがた」(英語: YT-58 class Yard Tag boat)は、海上自衛隊の第1種支援船であり海自最大の曳船。公称船型は260トン型曳船。海上自衛隊内では「えい船」と表記される。

概要

各港務隊及び基地隊等に配備されており、艦艇の出入港支援や非自走支援船等の曳航を行う。押し船としての機能を持たせるため船首は平らで、支援相手艦の艦橋や甲板を見やすいよう、操舵室上部に傾斜をつけたガラス窓を装備している。

船体周囲にはタイヤなどの防舷物(フェンダー)が、また改設計型には防舷帯も備え付けられており、支援相手艦艇にゴムの跡を付けない様、もやい索や幕をそれらの上に垂らしている。 ちなみに用いられているタイヤはP-3C哨戒機で使われなくなった廃品、ゴム部保護用のもやい索は艦艇で係留に使われ使用寿命を迎えたものを再利用している。 操縦性能を高めるため、2軸の全旋回式プロペラを持つ。静止推力が最も必要とされているため、性能要求には速力が入っていない。

鋼製で、消火設備も備えており、放水銃1~2丁と泡沫原液タンク1基を持つほか、火災船に近づいた際の焼損や船体温度上昇を防ぐための自衛散水装置を備え、消防船としても使用可能である。

また、ひゅうが型護衛艦やいずも型護衛艦では船体から飛行甲板が張り出しており、直接の出入港支援をする際にマストが接触してしまうため、ひゅうが型就役以後に建造された本船はマストが起倒もしくは伸縮できるようになっており、それ以前に建造されたものについても順次改装された。

基地以外での自衛艦艇の出入港支援や災害派遣、転籍による回航等の長期間の航海を想定して、船内には士官室(船長室)を含め、船員の居住区が存在している。実際に2011年3月26日から、福島第一原発事故に対する災害派遣が横須賀港務隊所属の曳船によって行われた。

船員は7名であり、船長を筆頭に甲板長、機関長とその補佐に就く科員で構成される。他の支援船と同様に、場合によってはこれら乗員で他の支援船を掛け持ちする。船長には各地港務隊に所属する3等海曹以上の者が割り当てられ、いずれも自衛艦の乗員経験者、かつ船体規模により要求される海技資格保有者が就く。

YT-95以降多くの改設計がされており、全般に共通する仕様として出力が1,800馬力から2,600馬力に向上し、それに伴い速力や推力も向上した。加えて操舵室後部にあった煙突を無くし、船尾左右舷に排気孔を設けた他、船内構造においても大きく設計変更されている。その他、順次小変更が加えられており細かい部分の艤装が異なる。YT-99で2桁の番号を使い切ったため、以後は01から順次再付与されている。

運用

主要任務である艦艇の出入港において、DD・DE・DDGといったクラスの排水量の艦艇では基本的に2隻の支援を必要とし、10,000トンを超える艦艇には更にもう1隻が管制支援を担う場合がある。いずも型護衛艦の出入港支援に至っては3隻の直接支援が必要であり、状況により管制支援を行う場合はさらに1隻を必要としている。

同型船一覧

ギャラリー

脚注

参考文献

  • 月刊 世界の艦船 1979年1月号、1979年1月号増刊、1995年1月号、2001年6月号、2011年1月号、2021年7月号
  • 自衛隊装備カタログ 1981年版
  • MAMOR vol.85
  • And Ships Photo Gallery」曳船・YT58号260t型-2020年1月25日閲覧。
  • 海人社編集部(編)「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向」『世界の艦船』第975号、海人社、2022年5月、143-144頁。 
  • 五老海聖太(編)「新造支援船が相次いで進水」『世界の艦船』第1003号、海人社、2023年10月、158頁。 

関連項目

  • タグボート
  • 港務隊

外部リンク

  • 「Vessel And Ships Photo Gallery」曳船・YT58号260t型
  • 基地祭に見る自衛隊装備品図鑑 曳船260t型

海上自衛隊艦艇 曳船 58号260t型 YT66 横須賀基地 2010年8月7日

曳船・YT58号260t型

曳船58号型 JapaneseClass.jp

曳船・YT58号260t型

海上自衛隊艦艇 曳船 58号260t型 YT92 舞鶴基地 2012年7月28日